いつまでも帰ろうとしない人々を残し、再会を約束して会場を後にする。トラックの荷台で風に吹かれながら、祭りの余韻で心があったかい。ソウルフラワーと東ティモールの出会い、強靭な土着文化に希望を感じずにはいられない。私にはそんな夜となった。
帰りの飛行機で隣になったのは、20日のコンサートを主催した組織のポルトガル人だった。優しい目をして東ティモールを語る彼の、現地住民とかけ離れた視点に、愕然とさせられる。ボランティアにも力を入れているという彼は、ポルトガル語が普及していない東ティモールを気の毒に思い活動を続けている。
「東ティモールとブラジルはともに元植民地として平等であるべきだ」。100%善意でそう話す彼に、東ティモール住民の気持ち、土着文化は伝わっていなかった。彼はまた、ブラジルのコルコバードのキリスト像を世界遺産にするため尽力している、と語った。先住民族の住む地に押し入って山のてっぺんに立った巨大なキリスト像が、東ティモールをとりまく大国の問題を象徴するように頭に浮かぶ。植民地を山の上から見降ろし、ふもとにある住民の文化から学ぶことを知らない視線が未だに存在することを、私は感じてしまう。21世紀、大国の犯罪とも言える行為の一方で、東ティモールは膨大な犠牲を払い、当然の権利を勝ち取った。自ら問題を生み出してそれに苦しむ現世界が、東ティモールのシンプルで強い信念に勇気づけられるよう願う。
参考
●『いつかロロサエの森で 東ティモール・ゼロからの出発』
南風島渉著 コモンズ ☆おすすめ☆
●『東ティモール 奪われた独立/自由への闘い』
『東ティモール2 「住民投票」後の状況と「正義」の行方』
高橋奈緒子、益岡賢、文殊幹夫 共著 明石書店
●ティモール・ロロサエ情報
http://www.asahi-net.or.jp/~gc9n-tkhs/index.html
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