ソウル・フラワー・ユニオン結成15周年、ソウル・フラワーレコード発足20周年記念盤!!
『満月の夕 〜90's シングルズ』2008年3月19日リリース!
SOUL FLOWER UNION 90's Singles
ソウル・フラワー・ユニオンがキューン・レコード在籍時(1993〜1999)に発表した全シングル、マキシ・シングル、ミニ・アルバムを時系列に集大成した、CD2枚組シングルズ・コレクション 2008年3月19日リリース! SOUL FLOWER UNION 90's Singles
アルバム未収録のカヴァー曲(エタ・ジェイムス、藤圭子、笠置シヅ子、浅川マキ、ブレヒト=ワイル)や各シングル・ヴァージョン、石野卓球リミックスの<エエジャナイカ>、ドーナル・ラニーやアルタンとのセッション曲群、未発表曲<さすらいのカッパ><電飾のまち(インスト)><満月の夕>4ヴァージョン(デモ・ヴァージョンも!)などなど、6曲のボーナス・トラックも嬉しい、収録時間155分のレアリティーズ・コンピレーション。
『満月の夕〜90'sシングルズ』 初回限定紙ジャケット仕様 Sony Music Direct(Japan) / MHCL-1316〜7 / 3,500円 (税込) / 2008年3月19日発売
【Disc-1】1.   世界市民はすべての旗を降ろす 2.   テル・ママ 3.   満月の夕(Single Version) 4.   レプン・カムイ(Single Mix) 5.   向い風(Single Mix) 6.   外交不能症(Sutakora Version) 7.   エエジャナイカ 8.   エエジャナイカ〜卓球の極道電子盆唄編  9. (ソウルフラワーの)夢は夜ひらく(Live Version) 10. ジャングル・ブギ(Live Version) 11. 宇宙フーテン・スイング 12. さよならだけの路地裏 13. ちっちゃな時から  14. もぐらとまつり(Live Version) 15. 短距離走者の孤独(Respectable Single Mix) 16. おんぼろの夜明け 17. 電飾のまち(Demo Version)/BONUS TRACK 【Disc-2】1.   満月の夕  2.   潮の路  3.   竹田の子守唄 4.   アリラン 5.   夜に感謝を(Japonesean Gospel Version) 6.   潮の路(Live Version) 7.   満月の夕(Live Version) 8.   イーチ・リトル・シング(Featuring ALTAN) 9.   風の市(Featuring ALTAN) 10. アラバマ・ソング(Featuring SAMM BENNETT) 11. 平和に生きる権利(TV Live Version) 12. 青天井のクラウン 13. 人力飛行機(Acoustic Mix)/BONUS TRACK 14. 信天翁(Naked Mix)/BONUS TRACK 15. さすらいのカッパ(Demo Version)/BONUS TRACK 16. 海行かば 山行かば 踊るかばね(TV Live Version)/BONUS TRACK 17. 満月の夕(Demo Version)/BONUS TRACK
★ 電飾のまち(Demo Version)
浮かんだアイデアを即デモとして記録していた頃の産物。シーケンス・ドラムに複数のギター・ダビング、という簡素なインストではあるが、97年当時の気分が詰まっており、このたび採用。
のちに<野づらは星あかり>に使われる主旋律が顔を出す。存在すら忘れていた小品。
★ 人力飛行機(Acoustic Mix)
内海洋子歌う、ヒデ坊(伊丹英子)作。93年当時、金子飛鳥さんによる素晴らしいエレクトリック・フィドルが我々のお気に入りで、ドラムやベースなどをオフったアコースティック・ミックスも残していた。ようやく陽の目をみるチャンスが与えられた珍品。
★ 信天翁(Naked Mix)
<人力飛行機>同様、金子飛鳥さんの活躍によって残されることになったネイキッド・ミックス。
後期メスカリン・ドライヴのライヴ定番曲でもあった。
★ さすらいのカッパ(Demo Version)
今回の目玉。ライヴで取り上げた全オリジナル曲の中で、ソウル・フラワー・ユニオン史上、唯一正式にレコーディングされなかった曲。
ヒデ坊と山口洋(HEATWAVE)が名曲だと明言していたのにも拘わらず、何故かお蔵入りになっていた。今回の発掘作業でデモ・ヴァージョンが発見された。
★ 海行かば 山行かば 踊るかばね
 (TV Live Version)
『エレクトロ・アジール・バップ』発売時に出演したテレビ番組でのライヴ演奏。太田(恵資)さんや大熊(ワタル)君らもゲスト参加。映像はDVD『ゴースト・キネマ 1993〜1997』で観ることが出来る。
★ 満月の夕(Demo Version)
発見! 95年、阪神淡路大震災被災地出前ライヴを始めてから2ヶ月という段階での、<満月の夕>最初期の録音。当時の、胸一杯になりながらの被災地での活動の空気感、匂い、泣き笑いが、この5分間に詰まっている。
General Produced by Nakagawa Takashi / Re-Mastered by Kotetsu Toru(JVC MASTERING CENTER)


 古今東西、この世で才能があると言われるミュージシャンはあまたある。だが、その才能の恩恵を、きちんと世の中に役立てることができる者は、果たしてどれくらいいるのだろうか? ミュージシャンが賞賛されることにのみ、作詞作曲、演奏の才能が費やされてしまうのなら、その音楽を聴く者にとって、彼らの音楽が価値のあるものと成り得るのは何故なのだろう? 別にチャリティの類いを言っているわけではない。チャリティはチャリティで、その意義を否定するつもりはないが、ミュージシャンはあくまでも音楽を奏でることで、世の中にリンクする生き物である。音楽に伴う経済効果を無視することはできないにしても、まず作品そのものの内実が、価値として成り立っていなければならない。

 ソウル・フラワー・ユニオンが90年代に残した業績は、まさにそうした問いに対するひとつの答えを示している。本作は彼らがキューン・レコードに在籍した93年から99年までの間に発表したシングル、ミニ・アルバムの収録曲を発表年代順に収め、ボーナス・トラックとして貴重な未発表音源を加えた二枚組だ。曲目に目を通せば一目瞭然だが、全34曲構成の中に、本作のタイトルともなった「満月の夕」は、なんと4つものヴァージョンが収められている。

 よく知られているように、この楽曲は彼らが95年にソウル・フラワー・モノノケ・サミットというアコースティック・ユニットを立ち上げ、阪神・淡路大震災の被災地の慰問ライヴを精力的に行う中で生まれた。曲調には被災地の人々に少しでも音楽で役立ちたいという思いから、流行り唄の数々をカヴァーした経験が反映されている。ぜひヴァージョンごとの中川の声色の変化に耳を傾けて欲しい。彼の唄は演奏を重ねるごとに、より深くより優しく研ぎ澄まされていく。これは作家性というようなちっぽけな自意識ではなく、被災地という現場に居合わせた人々とソウル・フラワー・ユニオンの生命の奥からの交歓の産物である。<悲しくてすべてを笑う>しかない現場に共に立ち、そこで何かをしようとした時、彼らは唄を差し出すしかなかったのだ。

 これは彼らにとって新たな出発点であった。その後に生み出された楽曲には、世界中の現場にいる人々に、<解き放て いのちで笑え>という呼びかけが、以前よりもはるかに濃密に宿っている。つまりソウル・フラワー・ユニオンは、ある種の使命感ともいうべき覚悟を持って、その才能を駆使するようになったのである。

2008年2月  志田歩
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