ロロサエ・モナムール
LOROSAE MON AMOUR
ソウル・フラワー・ユニオン
SOUL FLOWER UNION
BM tunes / XBCD-1010 / ¥3,000+税
ALBUM / SF-068
2005年7月20日 発売
バビロンに交響する、鼻唄と絶唱の地下放送!
ヤポネシアの最前線、不屈の民の越境のパレードは続く。
ニッポン零年をスイングさせるソウル・フラワー・ユニオン、四年振りのフル・オリジナル・スタジオ録音盤。
名品<松葉杖の男><ひかり><酒と共に去りぬ>、東ティモールのレジスタンス作<星降る島>他、全14曲65分の魂花連決定盤!
LA VIE EST BELLE! A LUTA CONTINUA!
Artist-Direct Shop 405にて
「<最前線ララバイ>PV収録DVD」特典進呈中
- 神頼みより安上がり
KAMIDANOMI
(CHEAPER THAN PRAYING TO GOD) - アル・ファジュル
AL FAJR
(DAYBREAK) - 松葉杖の男
MATSUBAZUE NO OTOKO
(THE MAN ON CRUTHES) - ひかり
HIKARI
(LIGHT) - 酒と共に去りぬ
SAKE TO TOMO NI SARINU
(GONE WITH THE LIQUOR) - パンチドランカーの夢
THE PUNCH-DRUNKARD’S DREAM - アル・ファジュル・フローズン・ブラス
AL FAJR FROZEN BRASS - 見世物小屋から愛を込めて
FROM THE FREAK SHOW WITH LOVE - 不死身のポンコツ車
PONKOTSU GURUMA
(IMMORTAL OLD BANGER) - 零年エレジー
ZERONEN ELEGY
(ELEGY FOR THE YEAR ZERO) - 最前線ララバイ
SAIZENSEN LULLABY
(FRONT LINE LULLABY) - 無防備な女の子とドタ靴の俺
MUBOUBI NA ONNANOKO
(THE DEFENCELESS GIRL AND ME IN SHABBY SHOES) - 完璧な朝~ア・ルータ・コンティヌーア!
PERFECT MORNING ~ A LUTA CONTINUA! - 星降る島~オーマルシラ・オーウルシーラ
HOSHI FURU SHIMA ~ OH MALUK SIRA, OH ULUN SIRA
(ISLAND OF FALLING STARS)
Produced by Nakagawa Takashi
SOUL FLOWER UNION (2005)
中川敬 Nakagawa Takashi : Lead Vocal, Guitar, Sanshin 三線, etc…
伊丹英子 Itami Hideko : Bouzouki ブズーキ, Guitar, Percussion, Hayashi 囃し, etc…
奥野真哉 Okuno Shinya : Keyboard, etc…
河村博司 Kawamura Hiroshi : Guitar, Backing Vocal, etc…
ジゲン Jigen : Bass, Backing Vocal, etc…
コーキ Koki : Drums, etc…
*
中西智子 Nakanishi Tomoko (SOUL FLOWER MONONOKE SUMMIT) : Ching-Dong チンドン, Backing Vocal, Hayashi 囃し
樋野展子 Hino Nobuko (SOUL FLOWER MONONOKE SUMMIT) : Sax
GUEST MUSICIANS:
上村美保子 Kamimura Mihoco (MO・MO・NA・SHI) : Backing Vocal, Hayashi 囃し
山口洋 Yamaguchi Hiroshi (HEATWAVE) : Guitar, Bouzouki ブズーキ
内藤哲郎 Naito Tetsuro : Wadaiko 和太鼓
ブラック・ボトム・ブラス・バンド Black Bottom Brass Band : Horns
(KOO : Trumpet, YASSY : Trombone, IGGY : Sax)
佐藤けんじ Sato Kenji (TEX & THE SUN FLOWER SEED) : Percussion
広田奈津子 Hirota Natsuko : Backing Vocal
小向 定 Komukai Sadamu : Backing Vocal
岡田マサル Okada Masaru : Backing Vocal
大河内美幸 Okouchi Miyuki : Backing Vocal
<松葉杖の男>の中川さんの歌唱、めっちゃ新しい。ニューエスト時代からいろんな音楽スタイルに果敢なチャレンジを挑んできはったと思うんですけど、これは「うた」というより「ヴォーカル」って感じ?新たな地平が見えました。勿論アルバムも最高でしたよ。 (岸田繁/くるり) |
ブレ無し、類似品無し、迷い無し。俺もポンコツ車に乗せてくれ!! (石野卓球/電気グルーヴ) |
日本代表レジスタンス音楽隊! 相変わらずの雄々しいノド声。心の皮を剥くメロ。アジってナンボ。史上初!土をこねて創造した音楽がここに! (ピエール瀧/電気グルーヴ) |
『ロロサエ・モナムール』を聞いて、もっともっと人の悲しみを一緒に悲しみ、人の幸せを一緒に喜べるような自分にならなくちゃいけないと思った。行動をおこさなくちゃいけないな! そう、いつもの仲間と美味い酒をあおる為に。また懲りずにロックします。 P.S. 来年あたりに内海洋子ちゃんと入籍しようと思いますので、パーティーでゲーリー1曲歌ってね。 (アツシ/ニューロティカ) |
久しぶりに届いたソウル・フラワー・ユニオンからの便り、待ってました。相変わらずの和製トラッド・ミクスチャー・サウンドも健在。聞いてて強く思ったのは音楽を感じる至福の素晴しさ。悩める小羊たちよ、小さな事は忘れてしまえよ世界中ではもっといろんな事が起こってるんだから厳しい状況下でも音楽は本当に人の心を癒す最高の武器だ、と言う事をこのアルバムは教えてくれる。特に<星降る島~オーマルシーラ・オーウルシーラ~>は感動です。 このアルバムを手にする諸君、「ただノリがイイから踊ろう」などと馬鹿なこというな。平和を噛み締めてしっかりハジケろ! (武藤昭平/勝手にしやがれ) |
ある朝、男が立ち上がり、目をぐっと見開いて、大きな声で世界中の歌に声をのせて歌いました。国、性、血、宗教、その線の中で、ドッジボールをし、ボールをぶつけ合っている人達に。その人達はきょとんとして、歌を聴き始めました。体を揺らし、手を叩き、線は依然として消えてはいませんが、知らぬ間に、気にならなくなりました。やがて、その人達は男の歌を覚え歌い始めました。だんだん、誰の何という歌なのかも誰もわからなくなりました。そこには音楽がありました。 このアルバムを聴いて、こんな物語を見た気がします。 |
さて、キミは旅に出る。世界/自分を深く知りたいと切実に思う。 そして、ここに1枚のレコードがある。キミを世界/自分へと導くガイドになり得るレコードだ。キミには理解できないかもしれない(初めての体験とはどれもそんなものだ)。しかし、このレコードには確実に芳醇な情報と知恵が刻まれている。イタリアの地名も読めないような田舎でつくられているチーズのように。キミもいつか理解できるようになる。そしてキミの内側に響くのを聴く。 旅が終わり、キミは考える。この音楽は全然間違っている、こんな解釈では伝わらない。-それがキミの世界/個性の誕生だ。 (ドン・マツオ/ズボンズ) |
ロックバンド、ソウル・フラワー・ユニオンは不思議なバンドだ! チンドンをやっても、ちっともあざとくない。中川の詩は俺が絶対に使わない・使えない言葉を平気で歌詞にする。「憤怒」「魔風恋風」「不撓不屈」そしてアラビア語まで使いやがる。きっと照れてる時じゃない場合じゃない事を知っているのだろう。ただそれを知っていても実践するのは簡単ではない。でも、ソウル・フラワー・ユニオンはそれを簡単にやってのけているのだろう。このアルバム『ロロサエ・モナムール』を聞いていると感じる。 (仲野茂/ANARCHY) |
前向きな歌がつまってますね、このアルバム。僕らとは音楽を演るフィールドが違うソウル・フラワー・ユニオンなんですけど、やっぱりそんな事は何も関係ないです。いい音楽、いいギター。一番大事なのは気持ちが入っているかどうか。 入りまくってますよ、このアルバムには。それしかないですよね。いかに気持ちを入れるか。難しい事はどうでもいいですよね。僕流に言うとまさに「ソウルフル」なアルバムです!! あと、個人的には映画『アンチェイン』、大好きです。 (ウルフルケイスケ/ウルフルズ) |
中川が持っている言葉とメロディは強烈で優しく、ユーモラスで純情、別に誉めたたえとるわけではないが、俺にジェラシーをむき出しにさせてしまうような凄みがある。 あいつと話してると、トゲが刺さって来る時がしばしば有る。反面、どこか憎めない愛嬌も有る。 もし、日本のロックが駄目になったとしても、こいつは大丈夫やろう。 だって、こんな極上の作品を産み出すんだもの、当然だ! ギョロギョロ目玉は伊達についてないな、ちゃんと見えてる。 (柴山俊之/Zi:LiE-YA) |
『ロロサエ・モナムール』は、濃厚な物語集である。
ソウル・フラワー・ユニオンといえば、メッセージ性の強いバンドと思われがちだが、ここにはストーリー性の強い曲が並んでいる。
「戦争反対」とか「憲法九条を守れ」とか「教育基本法改悪反対」とか、そういう直截的なメッセージはどこにも出てこない。直截的なメッセージに帰結する以前の、日本に住みながら越境していく民衆のボトムにある物語をすくい取ることに集中しているからだ。ボブ・マーリーにたとえるなら、<ゲット・アップ・スタンド・アップ>ではなく、<ノー・ウーマン・ノー・クライ>に相当するような曲が、全14曲、65分41秒、びっしりと詰まっている。 しかも、ヘルデール・アレキソ・ロペスという東ティモールで独立運動を続けていた青年によって作られた曲に日本語詞をつけたラストの曲<星降る島>以外、『ロロサエ・モナムール』はすべて中川敬によるオリジナル曲だ。ちなみに「ロロサエ」とは東ティモールの言葉テトン語で「日が昇る」という意味。東ティモールの人たちは東ティモールのことを「ティモール・ロロサエ」と呼んでいるそうだ。
フル・アルバムとしては『ラヴ・プラスマイナス・ゼロ』(02年)以来の作品である。その間、『シャローム・サラーム』(03年)と『極東戦線異状なし!?』(04年)がリリースされたが、それはフル・アルバムと言うには分量的にちょっと足りないミニ・アルバムであったり曲数の多いシングルであったりしたので、きっちりフル・アルバムに仕上げてから出してほしいという意見もあった。しかし『ロロサエ・モナムール』の全貌が明らかになった今、ソウル・フラワーの判断が正しかったことがはっきりと判る。『シャローム・サラーム』は、東ティモールでの体験を歌った名曲<リキサからの贈り物>を一刻も早く形にすることに意味があったし、『極東戦線異状なし!?』は、イラク状況がますます悪化するなか米軍によるファルージャ虐殺が行われた直後というタイミングで「その戦争をやめさせろ」と直截的なメッセージを発する曲を出すことに意味があった。そしてそれは、今思えば、次のフル・アルバム、つまりこの『ロロサエ・モナムール』では、直截的なメッセージに捕らわれることなく根元的な物語が刻まれた音楽をめざすという、最もディープな表現に心おきなく向かうために出しておかなくてはならないCDでもあったのだ。
もちろん、『ロロサエ・モナムール』の制作期間中もその合間を縫うように、中川敬は非戦音楽人会議などでサイバー・アクションを行っていたし、ソウル・フラワー・ユニオンの楽曲をジャン・ユンカーマン監督作品『映画日本国憲法』に提供したり、ソウル・フラワー・モノノケ・サミットとして「教育基本法の改悪をとめよう!全国連絡会」が主催する集会でライヴを行ったりと、メッセージ性の強い活動を継続していた。なにしろ今の世の中は、デッド・ボールぎみの球ばかり飛んでくるバッティング・センターのようなものである。飛んでくるボールは鋭い瞬発力で打ち返さなくてはならない。次々に飛んでくるボールが当たってボコボコにされないように。そういう「めんどうくさいこと」をきっちりこなしつつ、ディープな物語を発掘することに集中力を傾けて、この『ロロサエ・モナムール』を完成させたのだった。
それにしても「見世物小屋からコニャニャチワ~」である。初めて聴いたとき以来、伊丹英子と上村美保子(桃梨のヴォーカルにして、最近はソウル・フラワーの常連ゲストとしてお馴染み)による8曲めのこのコーラスのフレーズが耳に焼き付いてしまって離れない。流浪の民っぽい感じというか、乞食者(ほかいびと)っぽい感じというか、日本人としては明らかに非主流な感じというか、暗闇の奥から伸びてきた手に足首を捕まれる感じというか、とにかく強烈。阪神淡路大震災から10年を睨んで作られたコンピレーション『風ガハランダ唄』にしてもそうだが、ヒデ坊が係わることにより注入される魂みたいなものが確かにある。最近はライヴに欠席することも多いヒデ坊だが、さすがソウル・フラワーのスピリチュアル・リーダーである。
で、「見世物小屋からコニャニャチワ~」に慣れてくると、改めて『ロロサエ・モナムール』が名曲揃いであることに気づく。すでにライヴでお馴染みの<松葉杖の男>とか、まるで高田渡に捧げられたかのような<酒と共に去りぬ>とか。そして何より、いよいよ年季が入ってきたソウル・フラワー流ルーツ・ミュージックのビートが素晴らしい。ブルース、ロックンロール、チンドン、レゲエ、その他もろもろ、ミックスされている要素はあまたあるけど、もはやビートを因数分解して分析することなど無意味なほど、ソウル・フラワー流ルーツ・ミュージックとしか言いようがない音楽になっている。これは、単にDJ感覚だけでミックスされた音楽ではなく、あるときは隣町に辿り着いた異国の民と交わり、あるときは自ら流浪する民となる不屈のミュージシャンとして、必然的に掴み取った音楽なのである。
今、ぼくが聴きたいと思っていた音楽は、まさにコレなのだ。
(石田昌隆)