シャローム・サラーム
SHALOM! SALAAM!
ソウル・フラワー・ユニオン
SOUL FLOWER UNION
BM tunes / XBCD-1005(bmcd-1005) / ¥1,905+税
ALBUM / SF-065
2003年7月25日 発売
戦場から、ゲットーから、バビロンから、うたは自由をめざす!
戦闘的に非戦をうたうソウル・フラワーのスイングゲリラ宣言!
スカ、ファンキーソウル、トラッド、ゴスペル、レゲエ、ジャズetc…、解放の為の8つの方法。
このアルバムを世界中の平和を希求する魂の連帯に捧げる。
スタジオ・レコーディングによる5曲の新曲に加え、3曲のライヴ・メドレーを含む8トラック全13曲
- うたは自由をめざす!
ALL SONGS GO FORWARD TO FREEDOM! - スイングゲリラ宣言
SWING-GUERRILLA DECLARATION - そら(この空はあの空につながっている)
SORA
(THIS SKY IS LINKED WITH THAT SKY) - リキサからの贈り物
A GIFT FROM LIQUICA
(EAST TIMOR) - バンクロバー~ビッグ・アップル~杓子定木 (インスト)~戦火のかなた
BANKROBBER~BIG APPLE~THE FORMALISTS’ BLUE (INST.)~BEYOND THE FLAMES - ムーンダンス (インスト)~ロンドン・デリー
MOONDANCE (INST.)~LONDON DERRY - 進軍ラッパ・エレジー (インスト)~平和に生きる権利
SHINGUN RAPPA ELEGY (INST.)~THE RIGHT TO LIVE IN PEACE - 続・うたは自由をめざす!
ALL SONGS GO FORWARD TO FREEDOM!
(REPRISE)
M-5~7・・・Live Recordings
Produced by Nakagawa Takashi
SOUL FLOWER UNION (2003)
中川敬 Nakagawa Takashi : Lead Vocal, Guitar, Sanshin 三線, etc…
伊丹英子 Itami Hideko : Bouzouki ブズーキ, Guitar, Percussion, Hayashi 囃し, etc…
奥野真哉 Okuno Shinya : Keyboards, etc…
河村博司 Kawamura Hiroshi : Guitar, Backing Vocal, Engineering, etc…
ジゲン Jigen : Bass, Backing Vocal, etc…
コーキ Koki : Drums, etc…
GUEST MUSICIANS:
池畑潤二 Ikehata Jyunji : Drums, Percussion
真城めぐみ Mashiro Megumi (ヒックスビル) : Backing Vocal
上村美保子 Kamimura Mihoko (桃梨) : Backing Vocal
内海洋子 Utsumi Yoko : Backing Vocal
ドン・マツオ Don Matsuo (ズボンズ) : Backing Vocal
樋野展子 Hino Nobuko : Sax
鹿嶋 静 Kashima Shizuka : Fiddle
大河内美幸 Okouchi Miyuki : Backing Vocal
そら Sora : Hayashi 囃し
中川さん、奥野さん、河村さん、ヒデ坊さん、お元気ですか? くるりの岸田です。新譜良かったです。こんな所で改めてなんですが、SFUは最高です。SFUが音楽を演っているから、僕も音楽を演っているのかも知れません。だって、他に元気をくれる日本のバンド、いないんですもの。中川さんやバンドの思想を改めて、再確認しました。昔は何てハードコアなことを言ったはるんやこの人達は…と思っていましたが、時代がSFUに追いついたのか、今、もっともリアルな思想を鳴らしているなと思います。 (岸田 繁/くるり) |
今から約7年くらい前、生きる目的を見出す事が出来なかった僕は、もう一度日本に戦争が起きたら良いと思っていた。そして国が自分に生きる目的を命じてくれるのを望んでいた。国の為、国の為にと・・・。今度は人には甘えたくない、アイデンティティーを持てている。今でも平和という言葉を疑っているけど、それは良い平和を訴える言葉と手段を見てきてないからやと思う。だってこのアルバム聴いたら共感するもん。 (コザック前田/ガガガSP) |
『シャローム・サラーム』。
SHALOMはヘブライ語、SALAAMはアラビア語で、それぞれ「平和」を意味する言葉だ。ソウル・フラワー・ユニオンは1993年の結成以来、一貫して音楽を通じて非戦を訴えてきた。しかし今回の内容はタイトルからも窺えるように、かつてなかったほどに諧謔的なレトリックを廃し、鮮明にストレートにメッセージを伝えるものになっている。
いついつまでも愛される音楽を作りたい。ミュージシャンがそんな欲望を抱くのは、ごく当たり前のことだろう。しかし「今だからこそ」放たれねばならぬ想いもそれに劣らず重要だ。いやむしろ生身の人間が生臭さを抱えたまま、時空を超えた説得力のある作品を生み出すためには、今生きているこの瞬間に対し、ズバッと開かれていなければならないのではないか?
日毎にきな臭さを増してきた今のご時世では、にわか軍事評論家じみた小賢しいもの言いで天下国家談義に淫することはたやすい。だがだからこそ、今回の彼らはいてもたってもいられずに、あえてベタに「平和」「非戦」を訴えているのだ。彼らの態度は、戦闘的なまでにきっぱりとしている。仮に今のあなたがどんなに浮かれていようと、あるいはどんなに鬱々とした心境であろうと、本作の音と言葉には、聴く者を踊るアホへと変えずにおかないだろう。本作に獰猛なまでに満ちあふれている「生きる悦び「快楽」こそが、「平和」「非戦」への原動力なのだ。
もちろんその「快楽」とは、歴史の歪みの上にあぐらをかいた独善的で排他的な「快楽」ではない。歴史の歪みを解きほぐせずにはいられない欲望、未来への希望と一体になったオープンな「快楽」である。
これまでも在日コリアン、沖縄、アイヌ、アイリッシュとの出会いをサウンドに刻み込んできたソウル・フラワーの姿勢には、かつての宗主国イギリスに生まれ、ジャマイカ系移民との連携を通じてレゲエに接近していったクラッシュのジョー・ストラマーと通じるものがあったが、本作のレゲエ・メドレーには、まさにジョーの発想を受け継ぎ、発展させていこうという意志が込められている。
ちなみにそのメドレーのしょっぱなの<バンクロバー>は、昨年夏に朝霧で邂逅を果たしたソウル・フラワーに、あたかもバトンを託すかのように急逝してしまったジョーへの追悼の想いを込めたクラッシュのカヴァーである。
ビートルズに代表される英米中心の音楽への愛情を持ちつつ、イラク、パレスチナ、アイルランド、東ティモール、ジャマイカ、朝鮮半島といった諸々の辺境の現場で、平和を希求する魂への連帯を音楽で表明するソウル・フラワーは、歴史の歪みを音楽で解きほぐすR&R整体師だ。最近どうも歴史の凝りに悩まされているあなたへ、「戦闘的」にお薦めしたい一枚である。
(志田 歩)