World's End Laundry
- メルカトルのための11行詩 -

1993 suite supuesto!  TOSHIBA-EMI 
TOCT-8184 ¥3,000 (Tax in)

 1 リラの咲く日々
 2 
天使のチェインソー
 3 
トゥッティ・フルッティ・アイスクリームが溶けて悲しい
 4 
紺碧の空、キッチンの赤い壁
 5 
夜の国へ
 6 
始まる、もしくはそこで終わる
 7 
冷蔵庫に捨てる
 8 

 9 
星狩りの夜
10 
夏の日の葉脈
11 
35°07′

 



 

リラの咲く日々
 

雪が溶ける音で 僕は目がさめる
白いシャツを洗うための 朝が来た

寒い朝 春の朝

君に会うことが
僕の暮らしのリズムになったよ

あわててパンを焼く 薄くジャムを塗る
同じ毎日が ただ過ぎて行くけど

だけど、ほら 何か、ほら

君に会う日には
僕は違うよ 眠くはないんだ

心の野に咲くリラの花を
僕はいつまで守れるだろう
ナイーブという微熱を力に
僕は何と闘ってるんだろう

心の野に咲くリラの花を
僕はいつまで守れるだろう
日常という淡い霞の中で
僕は何を手にするの

寒い朝 咲いたリラ


 



 

天使のチェインソー
 

木星のように曖昧な僕らは
噴水の前でスタイルにおぼれる
あぁ こぼれ落ちた言葉の無意味さには
ため息さえ出るから

ラブラドールの瞬きの速さで
錆ついた僕の足首を洗おう
あぁ 落ち着かない 苛立ちも そのまま

ねぇ 欲しいのは 天使のチェインソー
最初のドア 壊そう

木星のように曖昧な僕らは
アンモナイトの顔色をうかがう
あぁ おかしいほど びくびくしてるけど

ねぇ 欲しいのは 天使のチェインソー
清らかで激しい
ねぇ 本当に 天使のチェインソー
最初のドア 壊そう いつか


 



 

トゥッティ・フルッティ・アイスクリームが溶けて悲しい
 

夏の昼下がり 
僕の楽しみが溶けた 
ドロドロになった
朝のうちにママが 
せっかく買ってくれたのに 
冷やし忘れた

さよなら 僕の sweet tutti frutti
こんな悲しみ 久しぶりだよ
さよなら 僕の sweet tutti frutti
君の冷たさが好きだったよ

3時から僕は何をすればいいの?
君を舐めたかった
君を食べたかった
君をぜんぶ

夏の昼下がり
僕の楽しみが溶けた
ベトベトになった
つまらないTV
夢中で見てたら あーあ (ママがせっかくさ)
冷やし忘れた (買ってくれたのに sweet tutti frutti )

さよなら 僕の sweet tutti frutti
( please don't cry, please don't mind, sweet tutti frutti )
今も想いはつのるけれど
さよなら 僕の sweet tutti frutti
( please don't cry, please don't mind, sweet tutti frutti )
君のお墓は このゴミ箱だよ
good-bye


 



 

紺碧の空、キッチンの赤い壁
 

紺碧の空 
一度は見てみたいよ
ねぇ 君と 
まして それが9月なら

すべての影を光に変えたい
あぁ 僕らは 
まだ生まれたことさえもないけど

君はキッチンをぜんぶ塗り変えるだろう
日曜のたびに 窓を開け

紺碧の空 
一度は見てみたいよ
ねぇ いつか
風が死んでしまうまえに

すべての闇を抱えて眠ろう
あぁ 僕らは
まだ目覚めたことさえもないけど

君がベッドを庭に投げ出してしまう
まともになれるチャンスかもね

僕のまわりで起きる
いくつもの悪いことに
銃撃とナイフで
とどめをさしたら
部屋をとびだそう

すべての影を光に変えたい
あぁ 僕らは 
まだ生まれたことさえもないけど

君はキッチンをぜんぶ塗り変えるだろう
テーブルも椅子もマカロニも

紺碧の いつか 
見てみたい 一度は
それが ねぇ まして
9月なら 君となら


 



 

夜の国へ
 

陽が西の尾根へと 沈んでゆくよ
鳥や森や雲も 等しく夜の国へ 

柔らかな風がここに吹く

星を探しながら 歩く小道の  
この地平の果てには 何が待ってるの

聞こえるよ 見知らぬ闇のこえ

寒い冬が そこまで来てる
悪い夢は 終わりにしよう
眠りたい 君の腕の中 Sha la la

肌をさす風が ここに吹く

寒い冬が そこまで来てる
悪い夢は 終わりにしよう
眠りたい 君の腕の中 Sha la la


 



 

始まる、もしくは そこで終わる
 

誰がエレベーターを止めてるのか
7年と5ヶ月と3日も
僕はただ傘を僕の部屋に
取りに戻りたいだけなのに

枯れた窓辺の花のように
僕はうつむくさ
なにしろ 今日 世界は
始まる、もしくは そこで終わる

じっとエレベーターを待ち続ける
7階でまだ動かない
限りなく無垢な僕の傘よ
どうかもう少し待って下さい

顔も知らない住人たちが
僕を嘲笑ってるよ
なにしろ 今日 世界は
始まる、もしくは そこで終わる

降り続く雨の音が
静かに 鼓膜を濡らす

枯れた窓辺の花のように
僕はうつむくさ
なにしろ 今日 世界は

顔も知らない住人たちが
僕を嘲笑ってるよ
なにしろ 今日 世界は

終わる
始まる
そこで終わる
始まる


 



 

冷蔵庫に捨てる
 

「覚醒」と「やり直し」の末にわかったこと
「僕ニハ 誰ヒトリトシテ 救エナイ」

君がここに居てくれたらいいのに
君がここに居てくれたらいいのに

真夜中
過ぎ
今日
も僕

1日のやりきれなさ
やなんか を カバン
から取り出し
冷蔵庫

捨てる

いまや
僕の空っぽだった
冷蔵庫は悲しみたちでいっぱいになり
(希望的観測ではあるにせよ)
心なしか
満足げにさえ見える でも

果たして
脱臭剤

製氷皿

彼らを受け入れてくれているだろうか


 



 


 

丘の緑が輝きだす頃
静かに僕は舟を出そう
水面に映った雲を揺らして
まだ眠たげな君を乗せて

いつかは出会えるかな
川を渡る 無数の蝶々の群れ

地図を持たない僕らだけど
どこかにやがては着いてしまう

大きなブナの葉影の淀みを
抜けたらしばらく空を見よう
こんな楽しいコトは初めてさ
誓うよ本当に初めてなんだ

いつかは出会うのかな
古い橋を 焼き落とす僕らに

地図を持たない僕らだけど
どこかにやがては着いてしまう
このまま こんなふうにしていたいのに

いつかは出会えるかな
川を渡る 無数の蝶々の群れ

意味をなくした帆をおろして
ただこの流れに 実をまかせよう

地図を持たない僕らだけど
どこかにやがては着いてしまう

どこまで こんなふうにして
うまく 雨をよけながら
風を追いかけながら


 



 

星狩りの夜
 

草原を 車へと向かう
今 消したラジオの音さえ凍る夜

もう 月は高くて
凍てついた風景を
ただ 照らしている

風をうけ 時は過ぎていく
その流れの渦に負けたくないんだ

また星を見つけた
古い樫の枝に
まぶしく光る星

遠い街灯り
君の待ってる家へ
星を袋につめ帰ろう

草原を 車へと向かう
今 消したラジオの音さえ凍る夜

もう月は高くて
凍てついた風景に
ただ僕だけがいる


  



 

夏の日の葉脈
 

懐かしいページに
スズカケの葉を
見つけた夜明け近く
薄い朝の靄は
手つかずで まだ
汚れを知らないまま

冷ややかな闇が
静かに消えて行くよ

君のドアへ 生まれたての光を
届けに行こう
風の中に 君が失くした答えを
僕は持っている

丘で君といつも 草に寝ころび
夏雲を二人見てた
遠い日の記憶が あたまをめぐり
昨晩は眠れなくて

木の葉の香りも
今日まで忘れてたよ

君の窓の 枯れかけてるつぼみを
咲かせに行こう
風の午後に 君が飛ばした帽子の
あのはかなさで

君のドアへ 生まれたての光を
届けに行こう
君の窓の 枯れかけてるつぼみを
咲かせよう 今日


 



 

35゜07´
 

街を変わろう
このままじゃダメさ もう

地球儀の上の
ここ以外のどこかへ

なにかいい出来事が
起こる気がする
夢のようになにもかも
うまくいくよ

新しい仕事も
すぐに見つけるから
ねぇ だから

コーヒーミルとか
ヌバックのシューズとか
みんな一緒に連れてけばいい

何もいい出来事が
起こらなくても
夢なんて嘘だって
知ってるから

地球儀の上の
君の好きなどこかへ