1st LP の流れのままに、僕達は EP. Nobody Knows This Is Nowhere の制作にとりかかりました。
イギリスのシュガーフロスト・レコードと日本のポルスプエストのコンピレーション盤に参加して、英国
デヴュ−。b-f は日本語詞にもかかわらず、なぜかイギリスでは一番評判が良く、不思議な感じでした。
ジャケット写真は、シュガーフロストのジョンとアッコさんの知り合いの子供さんです。大きくなってるん
やろなあ。

 1. グライダーと長靴

 小学校4年生で四国に転校した話は前にもしたけど、
その高松の小学校には、火曜日の6時間目にクラブ活動の時間というのがありました。なぜか クラスの男子の9割以上は「科学クラブ」を選択していました。僕は、仲間はずれになりたくなかったので そのクラブを選択しました。
 そこは、「科学」とは名ばかりの プラモデルや模型飛行機を作る為のクラブでした。2年半の間、毎週火曜日、僕はありとあらゆるプラモや模型飛行機を作り続けました。
「学校の授業でプラモを作るのはどうか?」などと子供心に思いながら、まあ そこそこ楽しんでた記憶があります。
とにかく、家の周りは空き地や田んぼだらけだったので、
飛行機をとばす場所には困りませんでした。


 この曲で一番思い出すのは、ライブやイベントで、まだ歌詞ができていないのをいいことに、「この前、
グラスゴーに行った時、たまたまGIG で見た無名バンドの曲のカヴァーです。」などと言って、何回もデタラメ英語で歌ったことです。プロ意識の欠如というかなんというか、この頃はリハーサルで数回あわせただけの新曲を歌詞もないままにデタラメ英語でライブ披露というのを しょっちゅうやってました。ごめん。しかもこの曲、グラスゴーの香り全くないし・・・。

1st LP の後、内省モードが強まりつつあった僕は、元々の後ろ向きな性格も手伝って、歌詞の世界が過去へ過去へと向かっていきます。


2. 動物園へ行こうよ

 その昔、四畳半フォークと呼ばれるジャンルの音楽がありました。「神田川」だとか「22才の別れ」だとか そういった曲です。僕はそういった なよなよした湿気の多い曲は全く好きではないのですが、もしかすると、「動物園へ行こうよ」は 誤解を恐れずに言うと、そちら系の曲に分類されてもおかしくないと言えるかもしれません(湿り気の質や度合は かなり違うとは思うけど・・)。
というのも、僕は この曲ができた当時、この曲のことを「ワンルームマンション・ネオアコ」と呼んでいたからです。あまりに気色の悪い、カッコ悪すぎるネーミングなので、できるだけ人に言わないようにしてたのですが、妙に的をえたネーミングだとも 密かに思ってました。

 大学で京都に来た当初、僕が好きになったり、つきあったりする女の子はみんな(って、そんな大勢じゃないってば!)なぜか動物園が好きでした。デートコースの手持ちが少なく、しかも 関西人にしては人を笑わせる能力が絶望的に欠如していた僕にとって、それはとてもありがたいことでした。なぜなら、僕が おもしろいことを言わなくても、アフリカゾウやフンボルトペンギンが じゅうぶん彼女達を楽しませてくれるからです。その上、僕は幼少の頃からの図鑑マニア。何を質問されたって 詳しすぎるくらいの説明が口からペラペラ・・・。と、ここまで書いて、かーなり モテない男度数 高いなコイツ。

 僕は自分の実体験を そのままに近い形で唄にすることを極端に嫌うタイプなもので、この曲の歌詞ほど100%現実を素直に描写したものは、あとにも先にもないのではないかと思います。
ひとり半暮らしのマンションの部屋、アイロン台、ギンガムチェックのシャツ、コーンフレークの箱、散らかった新聞紙・・・。目の前にあるモノをただ並べただけ。そして、ふと動物園へ行こうと思いつく。
なんか、ささやかやね。

 この曲は、いまだに みんなの間で動物園ツアーがくまれたりするくらい心にとめてもらってる曲なので、アルバムの所でも 動物園話をしようかなと思ってます。


 3. 静かにして、何もしない

 この曲はピアノと歌だけのとても小さな作品だけど、妙な力を持った曲ですね。
それにしても「静かにして、何もしない」なんて、28才のこれから働き盛りに向かおうかという男が、何をさとりきったことを言うとんねん!って感じやな、確かに。今頃になって Y 編集組長の言ってた意味がわかるような気もする。
メロディーはすっかり白昼夢の中って感じだし、歌詞にしたって「僕」は『はちの ひでし』ではないなこれは。『はちの ひでし』は水彩画も油絵も描かないもんな。100%空想。いったいぜんたい、どこに逃げ込もうとしているんだ、はちの君は!?

 レコーディングでは、ピアノと歌を録ってMIX して、その後 2〜3回 スタジオのラジカセの回路を通過させて 音をローファイ化させた憶えがあります。シュガーフロストのジョンとアッコさんがこの曲をいたく気に入ってくれて(これはほんと嬉しかった)、7インチシングルで全英発売(英題「stay still」)。しかも、なんとイギリスの音楽誌 NME や メロディーメイカーにとりあげられ 賞賛されてしまうんだから音楽ってわからない。普通なら、ちょっとバブルな気分でロンドン・ライブなど敢行してもよいものを、どこにも居場所を見つけられず、落ち着かない気持ちのままの bーf は、ただただ「静かにして、何もしない」でした。

 

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