「黒の舟唄」に「接吻」と、カバーのチョイスに自分に近い感性を勝手に感じています。そしてアルバムを通してすごい歌力に圧倒されてしまう。あとこれはぜひ言っておきたいんだけど「中川敬こわいんじゃないか!?」と思ってまだ聴いていない方々に、何度か共演しましたが、彼はとても冗談好きの楽しいミャージシャンなんです。 大槻ケンヂ 地の底から歌いあげる声のなかに、浪曲に親しい成分を探します。 濁り成分、倍音成分、トロッとした甘さ。 でも背筋をそっとなでる刃物。 中川さんの歌は、地ベタから生まれた芸・浪曲と、とても親しいけれど、確実に今の人のリアルに寄り添う。優しいなあ。 玉川奈々福(浪曲師)
中川さんが2011年のファーストソロアルバムから6年間で早くも4枚目のアルバムを出してしまいました。 先輩がそんなペースで新作を世に送り出し続けている現実に直面すると自分がサボっているのではないかと、とても焦ります。 "心の牢獄で命の輪郭を探してる" "ハクモクレンが空を撃つ" "激情が豊穣な闇からほとばしる" どうやったらこんな言葉が出てくるのだろう、とまた焦ります。 今、聴き始めて3周目なのですが聴けば聴くほどその歌詞、メロディ、アレンジ、演奏、そして声にやられています。 俺も早く次のソロアルバム作りたくなりました。 いいアルバム、ありがとうございます。またご一緒出来ますように! 坂本サトル ぼくが最も影響を受けたアメリカのフォーク・シンガー、ピート・シーガーの「Quite Early Morning」という大好きな歌がある。ピートが1969年に作詞作曲した歌で、そこで彼は「夜明け前がいちばん暗い/だからこそわたしは前に進み続ける」と歌っている。中川敬さんの新しいソロ・アルバムを聞いて、彼もまたいちばん暗い闇を歌っているフォーク・シンガーなのだと思った。あまりも暗くて深いその闇を彼は豊穣という言葉で表現する。その豊穣な闇の中で静かに息を潜めているのは強烈な光、希望と未来だ。 「苛立ちが服を着てるような唄にならない夜明け」を中川敬さんは、もがき苦しみながらひとつひとつ歌にしていく。 その歌声は渋く、野太く、重く、苦く、ドスが効いたものだが、彼の豊穣な闇の歌声の奥にも燃えるような光が輝いている。 中川五郎
新作おめでとう中川君! それにしても、大型新人フォーク歌手の登場がまだ昨日のような気がするのに早くも4枚目のアルバム? いつもながら中川君のエネルギッシュさには脱帽だ。 しかしこの大型新人の登場は、僕は20年前から予期していた。 これだけは自慢できる。 このアルバムに入っているニュー・モーニングのオリジナルが書き下ろされた彼のソロ・プロジェクト、ソウルシャリスト・エスケイプ。 僕も深く関わらせてもらったこのバンドがまだ始動する前の段階、ソロなら弾き語りでもいいんじゃないの?という意見もあったのだが、彼は「一人じゃ歌わない、バンドじゃないとダメ!」と首を縦に振らなかった。 僕は面白いバンドができるなら万々歳だったが、同時に彼はいずれ誰もが認めるようなソロシンガーになるだろうと確信していた。 あれから20年。世界はダークな時代に突入しているが、世の中捨てたもんじゃないと思わせることも少なくはない。 暗がりの中、思わず人の輪が狭まる焚火のような、誰もが見入ってしまう蝋燭の炎のような、夜空で方角を教えてくれる星座のような、そんな中川敬の歌に乾杯! 大熊ワタル 中川さんの歌はニューエストモデルの時から、ずっとブレない。根底にあるのは、虐げられている人たちや、追い込まれている人たちへの優しく力強い慈愛のような視線。 もちろんそれだけではなく色んな事を歌っているんだけど、根底にはそれがあるように感じていて、僕は聴くたびに胸の中のある部分が締め付けられます。 それは、いい年をしながら、半径30センチの閉じこもった世界の事ばかりを歌っている自分にもどかしさを感じているからかもしれません。 この感じは、10代の時、初めてパンクロックに出会った時の感情と似ているような気がします。 聴くたびにぼんやりした目が、かっと開きます。そして自分の頭で考えて、ちゃんと生きようと姿勢を正します。 社会に目を向ける事は、自分に目を向ける事と同じなんだと。 「あばよ青春の光」の「過去は決して消えない いや過去にすらならない 胸の底で疼く痛みは俺が俺である印」。 このフレーズは、この先、何度も僕を奮い立たせてくれると思います。 鈴木圭介(フラワーカンパニーズ)
いくつもの悲しい物語が奏でられる。 心地よい音色と軽やかなメロディと優しい獣のような歌声で淡々と。 歌われてる現実とこの調べのギャップに初めは戸惑い、僕は靄に霞んだ十六夜の月を見つめてしまった。 おぼろげに、つい昨日の記憶を拭い去ろうとしている自分がいる。満月の煌々とした光に照らされた悲劇は、あまりにも残酷で、光の無い闇の世界へ救いを求めざるを得ない不条理。 そこにいるだけでは何も解決しないやり切れなさを抱えて、自分を探りあてるしかないんだ。手探りで。 聴き終わった後の荒涼とした安堵感は、惨めな現実を餌にしてでも生きてくしたたかな安らぎだ。 遠藤ミチロウ なんと味わい深く愛おしさに溢れた歌たちなんだろう。 新作聴かせてくれてありがとう。 シンプルなサウンドながらこの彩り、香り。 中川くんが大好きになったよ。 土屋公平